制作について2 ひっかかったもの

何かひっかかる物事。

制作中はそのことばかり考えてます。

私にとって特別に好きな作家はというと困ってしまうのですが、自分を蓄積していく契機を与えてくれたのは井田照一さんです。

 

surface is the between /表面は間である

 

これは井田照一が創作をはじめた初期の頃に感得したものらしい。

以下、引用


〈表面は間である〉この考えを決定づけたのはあるひとつのエピソードがある。
井田はフランス滞在中にドーバー海峡を旅行した友人にお土産としてそこで拾った石をもらった。
なにげなく紙の上において、そのまま数年がたち、井田もそんなことを忘れかけてたある日、
なんとはなしに石をどけてみると、そこには石の重みの数年間の痕跡が残っていた。
この出来事で井田は、表面は常に変わるということ、また垂直と水平の関係を発見するのである。
私たちの目に見える表面が変わり続けるのは、表面が表面でありながら、
【間】に存在するものであるからだと井田は考えた。
我々が表面だと思っているもは【間】であり、垂直と水平の接点であるとも言える。
この垂直と水平の関係に、井田はかつてジョン・ケージとの対談から課題とした
「時間と空間の同時性」をも見出すのである。
これらの考えをより明確に示したのが「版画」という制作手段であった。
版となる紙の面は、版と紙の間に存在し、
そこへプレス機による垂直な圧力がかかることで版画作品が生み出される。
井田は、その作品の特異性ゆえ、「版画家」として認知されがちであるが、
タブロー、ペーパーワーク、陶や金属による立体造形など様々な素材や手法を用いて
〈表面は間である〉ことを形にし続け、表現し続けた。


 江寿コンテンポラリーアートHより 引用 

http://www.cohju.co.jp/artist/ida.html



私は学生の時に井田照一のこの言葉に出会って自分に引き寄せて制作をしていく態度に強く惹かれました。

井田さんの感得した表面に対するひとつのリアルな実体験。この感覚さえダイジに育てていけばあとは野となれ山となれ‥。どう表現しても本質に触れた表現になるんだな。と、とても心が震えました。



井田さんを知ってから7年経ち、久しぶりに先ほどのテキストを読み直してみたらやはりいまでも瑞々しいなあと思っています。